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「これは?」
蓮は訝しげな表情で数珠のブレスレットを指差した。
一つ一つの玉が小ぶりで透明な造りをしている。
「すぐに分かるから気にせんといて」
ニコリと微笑む千百合。
この笑顔にも何か隠されているに違いない。
「条件はシンプルに三つ。
一、決して逃げないこと。
二、ウチらを裏切らないこと。
三、嘘・暴力禁止。
簡単やろ?」
三本の指を立て、軽く小首を傾げる。
聞く限りでは特に奇抜なものはなさそうだ。
「二つ目の裏切らないって意味がよく分からないな。逃げるとどう違う?」
「んー、それはな──」
千百合は勿体ぶるように一呼吸置くと、
「企業秘密や」
人差し指を口元に当てる。
──なんなんだ、こいつ。
蓮は不思議と苛立ちを起こしていることに気づいた。
「からかってるのか?」
「ちゃうちゃう。ただ、ウチらにとって重要なことなんよ」
こいつらにとって重要なこと?
いよいよ理解が追いつかなくなってきた。
そもそも、俺はシュナを助けようとしただけなのに、話がだいぶこじれてきている。
事故とはいえ身体に触れたことは確かに悪いが、こんな訳の分からない状況にまで付き合わなければならないのか。
「そんなこと俺が知ったことじゃ──」
蓮が叫び掛けた瞬間、激痛が左手を襲った。
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