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弥生に復縁を求めた時、普通の精神状態ではなかったと今は自覚している。焦りと動揺が、いつもならありえない態度と言葉を取らせていた。
結婚を強要する女と完全に切れたと実感すると、健司は以前の性格に戻っていた。多少、偏見はあるが、礼儀をわきまえているという。別れた恋人を取り戻すには遅すぎたが……
「でも、会社作る時に金が要るだろ?将来的に予報業務で採算取れたとしても」
当たり前の疑問に智之は答えてきた。
「行成にはスポンサーがいるんだ。昴流と高橋さんだよ。
芽生も経営に入るから、昴流は喜んで出すってさ。高橋さんは、まぁ、ね」
ここで智之は口ごもった。健司は分かっているというように返した。
「高橋さん、弥生のために出すんだろ?知ってる。月森さんに言われたんだ。弥生のこと妹だってな。
結婚したのか?」
探る意図を込めた。春陽は弥生のことを将来の妹と言った。既に月森家に挨拶したと、弥生も言っていた。結婚を決めていても不思議ではない。
今さらどうしようもないが知りたかった。
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