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智之は、健司の言葉にホッとしている。失言と思ったようだ。
「いや、今は婚約だ。布川、働いたばかりだろ。さすがに、結婚は早いって」
婚約という言葉を聞くと、やっぱり胸が痛くなる。
冬夜がいつ、弥生に恋愛感情を持ったのか分からないが、通常の交際ではありえない素早い行動は、彼がかなり前から想っていたのでは、という考えを抱かせた。
もし、そうなら、健司の行動は、彼には絶好のチャンスだったわけだ。冬夜の感情は知らないが、結果的に恋敵に奪われる状況を自分で作った形になる。
しかも、彼は月森家の次男。すべてが健司よりも格上だ。自業自得と思うと辛いが、そのとおりでもある。
そして、昴流と芽生を名前で呼んでいることで、智之は、二人とかなり親しいとも分かる。つまり、ホストという前職に対する偏見はないのだとも。
健司にはできなかった。水商売をしていた奴という思いで接したから、昴流は、彼に対して打ち解けた態度を取ることはなかった。
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