第一章 天気雨の心

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 ただ、協力を決めた時に彼女から聞かされた。冬夜は、莫大(ばくだい)な収入がある、県内でもナンバーワンホストだったと。  そんな彼と交際することに、彼女は優越感を持っていたらしい。どれだけの収入なのか、気になる程度の好奇心はある。  智之は苦笑しながら教えてきた。  「気持ちは分かる。俺も昴流から聞いたよ。  それほど大きくない街のクラブなのに、高橋さん目当てに、東京から客が来ることも珍しくなかったんだってさ。あの美貌だけでもすごいけど、接客も相当すごかったらしい」  ホストの接客……健司には、見え()いたお世辞で女を喜ばせて高い酒を注文させる、という考えがあったが、冬夜の接客は違うらしい。  どんなことをするかはまったく想像もできない。冬夜と話したことはないので、余計に分からないのだろう。  彼が独立してから経営するバーにも行ったことはなかった。もしかしたら、そこに行けば分かったのかもしれない。淡く、もったいなかったという気持ちになった。
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