第一章 天気雨の心

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 ぼんやりとする間も、智之の説明は続いていた。  「関東一のホストって呼ばれてたって。  だから、一番すごい時は、店の売り上げの四割が高橋さんだったそうだ。それなら、もらう金もケタ違いになるさ」  「……」  総売り上げに対する割合を知ると、店の取り分を引いたとしても、かなりの金額が支払われるのは分かる。  「最近、マンション、現金で買ったって聞いたぞ。ローンにする必要ないって」  どんなマンションかは知らないが、弥生(みお)と婚約したなら、新居の意味があるだろう。それなりの広さと環境のはずだ。    それを現金払い……  預金すべてを購入費用にするわけはないから、彼は、健司が一生見ることのないほどの財産を持っていると分かる。  冬夜のことを知るほどに、格差を感じた健司は、態度には出さなかったがかなり落ち込んだ。  「そうなんだ。賃貸で高い家賃払うなら、買うって考えても当然か」  平凡な言葉だったから、健司の内心に気づくことなく智之は頷いた。
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