第一章 天気雨の心

16/27
前へ
/196ページ
次へ
 ***  自分の部屋に帰ると乱雑な状態で、健司はうんざりした。  あの女の件が解決したので、健司は家具の配置を変更することにしていた。気分を変えたかったからだ。  狭い部屋なので移動は簡単だが、レイアウトに苦労していた。前の配置は弥生(みお)が決めた。彼女は、部屋が広く使える配置を考えてくれた。実際、便利だったが、彼女がこの部屋に来ることはもうない。  いつまでも過去を振り返っていたくないと、健司は溜息をつきながら、ビジネスバッグを邪魔にならない場所に置くと、家具の配置を考えだした。  もう、ベッドの上で食事はしたくない。  「今日から始めれば良かった」  二人の女性との縁が切れたからか、健司は独り言が増えた。返事のないつぶやきは、余計に孤独を感じさせるのに、どうしても、やめられない。  「土日で頑張るか」  沈黙が(つら)いので、テレビをつけた。実家にいた時はあまり見る習慣はなかった。でも、今は結構見ることが多い。バラエティ番組の賑やかさは、孤独を一瞬忘れさせてくれる。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

390人が本棚に入れています
本棚に追加