第一章 天気雨の心

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 毎月、ほぼ同じ社員なので、余計に疲れる気分だ。普段からきちんと書類整理をしていれば忘れるはずはない。つまり、ぎりぎりになるまで放置しているのだろう。  (こいつら、いつか重要書類を()くして青くなれ!)  かなり物騒なことを思いながら、健司は領収証の提出者に、支出に必要な書類を添付(てんぷ)した社内メールを送った。印刷して持ってきてもらいたい。  不在中に置いていくという態度に苛立(いらだ)つので、直接会いに行く気になれない。  それでなくても月初めは、全部署から領収証が回ってくる。まとめて提出されると処理が大変なので、その都度(つど)出してほしいと各部署に頼んでいるが、守られることは、ほとんどない。  締め切り後の提出常習者に対しては、仕事が失敗して降格する呪文を掛けたいと思うほど、腹が立っている。もちろん、一年目なので、心の中だけだ。  健司の担当業務は、領収証の最初の分類だ。経費ごと部署ごとに分けることと、承認(しょうにん)が無理な領収証を選びだすのだ。  彼の仕分けの後、二人の社員がさらに確認して、不許可の領収証は本人に返す。もちろん支払いはない。
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