第一章 天気雨の心

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 これも毎月だが、必ず不服を言ってくる社員はいる。  新人の健司でさえ不可だろう、という経費を認めさせようとすることが、まったく理解不能だ。  残業したので栄養ドリンクを買った、という申請は微妙だが通している。最終的に認められる可能性は低いが。  栄養ドリンクでも微妙なのに、アイスやチョコレートを申請してくる社員がいるのだから、信じられない。疲労回復が名目だが、冗談だろうと毎回思う。  購入して食べるのは、もちろん、本人の自由だ。ただ、その金は自分で出してくれと思う。  「おい、新人」  領収証の検認(けんにん)を進めていると、好意的とは到底思えない声が聞こえてきた。  毎月、文句を言ってくる中年の社員に呼ばれると、条件反射的に身体が震える。しかも、名前を呼んでこないという、礼儀知らずな態度。  どうして、この社員が本社勤務なのか、健司にはまったく不可解だった。  それでも先輩社員になる。無視はできない。
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