第一章 天気雨の心

9/27
前へ
/196ページ
次へ
 「俺は、そういう数字にはまるで弱いから、あんまり聞いたことないんだ。ただ、採算は契約企業の数が決め手と言ってたな。  気象会社ってのは、テレビの天気予報よりも企業や個人からの依頼で予報するのが主な業務なんだそうだ。だから、契約が少ないと採算が取れないってことじゃないか」  「じゃ、気象予報会社ってだけか」  それなら独立する意味があるのか、よく分からなかった。気象庁だけで充分に思える。  「まさか。そっちは経営って部分の話だ。金がないと会社は動かないからな。会社作る理由の大きい部分ってのは、大学や役所では無理な、好きな研究をするための資金確保らしい。  当たり前だよな。大学は多少違うが、役所はまったく実用性のない研究に予算出してはくれないだろ。業務が業務だからさ」  頷いた。基礎研究が採算的に難しい程度は知るが、気象学は実用そのものの学問だ。研究が実用に直結しないと、資金確保は厳しいだろう。  「だから、その研究に実益が出るとなれば、国の予算が回ってくる可能性があるよな。そのための受け皿って部分も起業の理由の一つってことだ」  趣味と実益を両立させるための会社設立だと理解した。行成は、財務を分かっているらしい。少し見直した。  「へぇ……やるもんだな」  賞賛の言葉は素直に出た。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

390人が本棚に入れています
本棚に追加