第一章 ようこそ、地獄の閻魔庁へ

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「驚かれるのも無理はありません。 私は『小野篁(おののたかむら)』。 この名に聞き覚えはありませんか?」 『小野篁』。 あれ?どっかで聞いたような名前だけど。 「わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまのつり舟」 澄み渡るような声が彼の口から響く。 その和歌を反芻して、中学の時国語で暗記させられたのを思い出した。 「百人一首!!」 「ご名答」 にこりと彼は笑った。 だが彼の表情は引き締められたように変わる。 「実は小夜子殿、折り入ってお願いがあるのです」 神妙な顔で彼は、 「私の仕事を、いや閻魔大王の仕事を手伝っては頂けないでしょうか?」 「・・・・・・はい?」 思わず馬鹿そうな顔で返してしまった。 「六道珍皇寺の井戸の伝説をご存じないではありませんか?」 私は初めての話に首を振る。
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