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「驚かれるのも無理はありません。
私は『小野篁(おののたかむら)』。
この名に聞き覚えはありませんか?」
『小野篁』。
あれ?どっかで聞いたような名前だけど。
「わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまのつり舟」
澄み渡るような声が彼の口から響く。
その和歌を反芻して、中学の時国語で暗記させられたのを思い出した。
「百人一首!!」
「ご名答」
にこりと彼は笑った。
だが彼の表情は引き締められたように変わる。
「実は小夜子殿、折り入ってお願いがあるのです」
神妙な顔で彼は、
「私の仕事を、いや閻魔大王の仕事を手伝っては頂けないでしょうか?」
「・・・・・・はい?」
思わず馬鹿そうな顔で返してしまった。
「六道珍皇寺の井戸の伝説をご存じないではありませんか?」
私は初めての話に首を振る。
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