第一章 ようこそ、地獄の閻魔庁へ

14/54
前へ
/264ページ
次へ
「先ほど小夜子殿が見られていた井戸のことです。 そこから私は昔、日中は役人として朝廷に出仕し、夜はあの井戸を通って冥界にあるここ、閻魔庁に出向き閻魔大王の補佐をしておりました。 今は基本、閻魔庁で働く者達を取り仕切る立場にいます。 何故現世にいた私がそんな事をしていたかと言いますと、地獄という所の考えと、現世、今、小夜子殿達が生きている時代の考え方にはどうしても違いがあります。 仏教という世界のルールは基本曲げることは出来ませんが、そこの中だけにいれば何の違和感も疑問も感じないので変える必要性を感じません。 ですが新しい亡者はその時代に生きてきた者達で、その世界のルールや考え方で生きていた。 裁きの際にはその者達の意見も取り入れるべく、言ってみれば亡者の側に立って今生きる現世の代表として意見して欲しいのです。 その資格ある現世の者を、私達はずっと探しておりました。 そしてやっと見つかった、それが小夜子さん、あなたです」 切々と話された後、まるで愛の告白のように言われても混乱するだけだ。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1352人が本棚に入れています
本棚に追加