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「本当に、何も殺生をしていないと?」
「は、はい・・・・・・」
重く、大きな声が部屋に響き渡り、死に装束の男はか細く返事をする。
大男が笏をつい、と動かせば、机の近くにいた鎧をまとった鬼達が大きな鏡を大男に見えるように向けた。
この鏡は『浄玻梨(じょうはり)の鏡』と言って、亡者の生前の罪が全て映し出される恐ろしいシロモノだ。
その鏡を大男がのぞけば、今は亡者となった男が母親を殴りつけたり、公園の子供に罵声を浴びせたり嫌がらせをするなどの所業が数々と映し出され、それを見た亡者は怯えながら俯いた。
「ほう」
大男の一言で亡者は恐怖からぺたりとその場に座り込んでしまい、近くにいた獄卒と呼ばれる鬼の顔に人の身体を持つ者達が、乱暴に亡者を立たせても亡者は全て諦めたようにがくりと俯いたままだ。
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