第二章 愛と欲望と衆合地獄

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かなり長い時間応接室から話し声は漏れ聞こえ、気が付けば夜の9時を過ぎている。 応接の中で椅子の音がして、帰るのだとわかりお見送りのため応接の近くに待機した。 「また何かありましたらご遠慮なく」 「えぇそうさせてもらうわ」 先生は仕事用の無表情にも思える顔つきで冷静に声をかけ、女性は涙声なのに安心したような笑顔を見せた。 あんな綺麗な女優さんが泣いてしまうほどの相談、きっと辛い内容だったのだろけれど、先生に相談したことで安心したのかと思うと純粋に凄いな、と思ってしまう。 エレベーターのドアまで見送り事務所に入ると、先生が息を吐きながら肩を大きく回した。 私が応接に入ればむあっとした香水の匂いにむせかえりそうになって、急いで窓を開けて換気する。 「そこの書類はそのままでいい」 応接に顔を出した先生がペットボトルのカルピスをグビグビ飲みながら言った。 「コピーとか良いんですか?」 「男女の性行為が大量に写ってる写真、見ること出来るか?」 机の上にある書類を整えようとしていた私の手が止まる。
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