第二章 愛と欲望と衆合地獄

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「今回の相談は夫の不倫だ。 先に興信所で調べたらしいが、その証拠が大量にそこにあるんだよ。 なかなかにハードな内容だが、見たいか?」 思わずぶんぶんと首を振る。 先生はペットボトルをテーブルの隅に置き、書類を自分でまとめだした。 「だがそのうち仕事なら嫌でもやってもらう。 ご遺体の写真も見ることになるだろう」 「えっ?!」 私は驚いて思わず声が出てしまった。 それを聞いても先生は特に反応せず片付けをしている。 「弁護士の仕事ってのは幅広い。 企業が依頼者になることもあれば、罪を犯した者の側に立ち戦う者もいる。 うちは近藤先生が顧問を持ってる会社から依頼が来たり、個人的に近藤先生を頼ってくる人も多いから仕事内容は多岐にわたる。 それこそさっきのような有名人も来る。 離婚などの家庭相談から、交通事故の被害者や加害者。 企業の顧問も抱えているから、企業トラブルを税理士と組んですることもあれば、芸能人のスキャンダル対応もすることもある。 出雲も法曹を目指すならそういうことから逃げられないんだ。 今のうちに耐性をつける良い機会にもなるだろう。 今まで彼氏もいないだろうから、特にこういうのは刺激が強すぎるとは思うがな」 緊張しながら話しを聞いていたけれど、最後の言葉にむっとする。
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