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二人で片付けを終え、事務所を一緒に出ると外はもちろん真っ暗だ。
外では一切仕事の話は禁止と言われていたので学校のことを話すけれど、先生は聞いているのかいないのかわからない曖昧な返事を時折するだけでむっとしてしまう。
バス停に向かおうと路地を曲がったとき、向こうから歩いていた女性が目を見開いて私達の前で立ち止まった。
「どういう、こと?」
ボブヘアでスーツ姿の知的な若い女性が、怒りを露わにした表情と声で私達を見た。
私には一切見覚えの無い人。
隣にいる先生を見上げると、前を向いて不思議そうな顔をしていた。
「仕事帰りだが」
「そうじゃない!なんで私を放っておいてこんな、こんな若い女と!」
女性は身体を震わせ先生を睨み付けながら私を指さした。
誤解されてる?!もしかしてこの人先生の彼女なんじゃ。
これはまずい。私はバイトです、と言おうとしたとき、
「君に、関係ないだろう?」
静かな先生の言葉に女性の顔が一瞬でカッとなって、バチン!という音が静かなビルの間に響き渡る。
「やっぱり最低な男だったわ!!」
振り上げた手を下ろし女性は大きな声でそういうと、私の肩に勢いよくぶつかってそのまま横を通り過ぎた。
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