第一章 ようこそ、地獄の閻魔庁へ

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地獄には十人の王がいる。 裁判所で言えば地獄自体が最高裁判所で、一人一人の王が最高裁判事として亡者を裁いていくが、閻魔大王は最高裁判所長官に似ているような一番偉い立場にあり、閻魔大王の決定はとても大きく、他の王が持たない、亡者が生前犯した善業悪業を『浄玻梨の鏡』で写しだし、先に渡されている亡者についての帳簿と比べて審判を渡す。 で、ただの女子大生である私は何をしているのかというと、閻魔庁から頼まれた閻魔大王のちょっとした補佐役だ。 事前に書類が閻魔庁から届いてそこから気になる亡者を私がピックアップし、閻魔庁での裁きに立ち会い意見を述べるというもの。 裁判で被告人を弁護する弁護士に近いかも知れない。 だがそれと違うのは、私が亡者全員を守る必要も無ければ、むしろ私が判断を甘いと指摘することもある。 私の存在意義は、 『現在の日本の感覚を元に意見すること。そして場合によっては私情を挟んで良い』 という、亡者の地獄先に思い切り影響を与えかねてしまうなんとも責任重大な仕事。 そんなことを大学一年になったばかりの私にさせているのだから、亡者の皆様には申し訳ないとしか言い様がない。 なので姿が見えていないのは本当に助かる。
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