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アンリ、ふしぎな生き物。
排水溝の下と違って、雨は私の全身にしとしととまんべんなくあたる。
こんなにたくさんのお水ははじめてで、いっぱい流れ落ちて、ぶつかって、ぱちぱち音がする。とても変な感じ。
すぐ近くの、『ベンチ』についた。
アンリは私を持ち上げて、ベンチの上に置く。
「ええと、じゃあ、何話そう? 排水溝って楽しいの?」
『楽しい』のかな。よくわからない。
「うーん、外と、排水溝の中とどっちが好き?」
外のほうが明るくていいかも。なんか、楽しいです。
「そう? よかった。えーとそれじゃあ……」
私はアンリといろんなお話をした。アンリは『高校生』で、楽しいことがすき。
『ハルくん』と、『とうやくん』もすき。『とうやくん』は『お菓子』をくれるんだって。
アンリは面白いものもすき。
ここは『辻切センター』っていうところの『公園』で、たまたま歩いていたら排水溝の中の私を見つけたんだって。
「アイちゃんは、したいことある?」
私、アンリがほしい。全部ちょうだい。
きらきらしてて、とっても奇麗。
「うーん、私は、あげられないかな?」
そうなの。じゃあ、アンリになれる?
「うーん、どうだろう? なれそう?」
わかんない。アンリはきらきらしすぎてて、無理かも。
どうやったらそんなにきらきらするのかな。
「えーと、どういう人ならなれそう?」
『人』? 人になるの? どうだろう? もうちょっと、簡単なもの?
「簡単……かぁ。えーと、わかった、じゃあ、一緒にいこう」
そして私はまたアンリにずるずると引きずられ、がたんごとんと揺れる『電車』に乗った。地面の方が動くなんてへんなの。
それからまた、ずるずると引きずられて、四角い『建物』についた。
四角い建物の中をまたずるずると引きずられて、『部屋』の前に立つ。
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