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「龍ちゃんはやれば出来る子なの」
祖母や母からそう言われる度、そう信じて疑わなかった。素直に信じる気持ちは力に変わり、人より物事の飲み込みは遅い方ではあったが、様々なものを習得することが出来た。大金を掛けて教室に通わせてくれたこともあり、感謝はしている。
ただ、その想いに引っかかりを覚えたのは中学から高校に上がる時だった。
「貴方にね、私の出来なかったことをやってもらいたいの」
テレビや小説で親の夢を継ぎ、成功を遂げた人のサクセスストーリーは何度も見ていた。
泣き笑いながらそう告げられた瞬間、俺は察した。だから俺も成功するために、誰かの想いを叶えるに夢をそっちに向けた。もともと将来の夢など無限にあって困っていたのだから逆に大助かりだと、指し示してくれた道を有難く進んでいた。
プレゼントを重いと感じるようになったのは、いつだったのかすら覚えていない。思い出せないのではなく、自覚した時には既に遅かったのだ。
会食での逸品も薄々しか味がしない。匂いはどれも同じで、選択肢は常にあれ。
「立派だよ、龍ちゃん……!次は私がまだ見たことがない景色を見せて」
『ああ』
肯定が嘆きになったのはいつなのか。
言葉って面白い。読み方が一緒でも意味が違ったりするのだから。
ああ。嗚呼。アア……ア……ァ。
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