2.カイシンノジカン

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2.カイシンノジカン

 おじさんが何気なく窓の外を見ると、セーラー服姿のJKが立ち小便の練習をしていた。  おじさんは神を崇めるような気持ちでその様子を眺めながら、昨夜鑑賞した『ヴォインの妻』(犬宰治監督)について回想していると、不意に部屋の扉が開いて、白衣姿のかなこさんが現れた。  かなこさんの「回診の時間です」と言う美しい声が聞こえた気がしたおじさんは、パジャマを脱ごうと思い首元に手をかけたが、ボタンがなかった。というよりも、そもそも上衣をまとっていなかった。  ついでに言えば、ズボンもはいていなかったが、パンツはかろうじてはいていた。  脱いでおけばよかったと、おじさんが後悔したそのときだった。 「回診してください」  今度ははっきりとかなこさんの声が聞こえたのだが、おじさんは本当に回診してもいいのかと戸惑う自分に戸惑った。  でも、オレは(オトコ)だ。怯んでなどいられないと思い直したおじさんは、意を決してかなこさんの胸元に手をのばした。  が、なぜだろう―― 「いい加減、回診してください!」  荒い声が聞こえてきて、おじさんの手はかなこさんの手によって払いのけられてしまった。  おじさんはわけがわからず、かなこさんの顔をじっと見ていると、彼女の手がワゴンのうえに乗っているノートパソコンにのびた。  マウスを動かしながら画面を見つめるかなこさんの、エロそうな口が開いて、こんな言葉が漏れ出てきた―― 「あなたがこれまでに働いた悪事を、ひとつでもいいから思い出して、そして反省してください」  ああ、なるほど。改心の時間か――  かなこさんの要求をようやく理解したおじさんは、過去に働いた悪事について思い返してみたのだが、どうしても思い出せないでいた。  考えてみれば、おじさんは未来のことについて考えるのは得意だったが、過去のことについて考えるのは苦手だった。とりわけ、過去の悪事について考えることなど、ほとんど不可能だと言っていいくらいだった。    しかしながら、未来の善行について考えるのを得意としていたおじさんは、それについて語ることによって、過去に働いたかもしれない悪事についての反省に代えてはどうだろうかと考えた。  おじさんに迷いはなかった。  だから、特にかなこさんに断ることもせずに、これから行おうと考えた善行について、おじさんは堂々と口にした――  
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