落とし物センター

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落とし物センター

「ん? こんなところにウサギのぬいぐるみが……。やっぱり人が多いところは落とし物も多いわね」 拾ったぬいぐるみの土を叩き落とすと、持っていたカゴに入れた。 カゴの中には遊園地内で見つけた落とし物が入っている。 私の仕事は、これらを持ち主に返すこと。 「戻りましたー」 「あ、千崎(ちさき)お疲れー。って、またそんなに落とし物があったの?」 ぽっちゃり体系の先輩。茜崎(あかねざき)さんは、机の上に置いたカゴを見るなりため息を吐いた。 「そうなんですよねー。あ、マイク借りまーす」 「どうぞー」 園内放送を流すべく、拾ってきた落とし物を持って放送室に入る。 「さて、まずはウサギのぬいぐるみね。遊園地の物ではないから、名前とかあるかしら? それと、持ち主は誰?」 私は両手で持ったぬいぐるみに向かって訊ねる。しばらくそうしていると、観念したようにウサギが口を開いた。 『ラビ。持ち主はシホ』 随分と不愛想なウサギね。 ため息を吐くと、気持ちを切り替えてマイクのスイッチを入れた。
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