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学校帰りに必ず寄る、大きな病院と公園に挟まれた細道にある自販機のそばに、膝を抱えるようにして少女が座り込んでいた。
ぼくは少女に気づいていないふりをして、自販機で飲み物を買った。
「ねえ、見えてるんでしょ?」
少女が地べたに視線を落としたまま、ポツリと言う。
「……見えてるよ」
缶コーヒーを開けながらこたえると、
「やっぱり」
と言って、少女がぼくへ視線を向けた。近くで見ると、肌の青白さが気になる以外に特に変わったところのないその顔は、思った以上に目鼻立ちが整っていて、十七、八歳だろうか、ぼくと同じくらいの年齢に見える。
これで、何度目の幽霊だろう?
ぼくは小さいときから幽霊が見えて、そのことにすっかり慣れてるはずだったのに、このときばかりは、それが恨めしかった。
ぼくは病院の上層階の窓を見上げながら缶コーヒーを一気に飲み干し、無言のまま少女を見ないようにして歩きだした。
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