4月:いつもの日常

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* 午前の授業を全て終え、昼休みの時間になった。 「珱琉ーー! 食堂行こうぜぇーーー!!」 英斗がバカでかい声で叫んでいる。あいつは静かに過ごすことができないのかな? そして英斗の周りには、或人と2人の男子生徒がいる。 1人は髪をブルーアッシュに染めており、黒曜石の様な瞳をしている。 彼の名前は久遠(クオン) 鏡夜(キョウヤ)。 身長187cmで筋肉ムキムキのとてもいい身体をしており、普段からあまり表情が変わらないため、威圧感がすごい。 しかし実際はただ人見知りなだけで、仲良い人の前では普通に表情がコロコロ変わる。 しかもオカン属性も兼ね備えているので、彼はコミュ障オカンな強面イケメンという何とも属性過多な男なのだ。 ちなみに彼も《暁闇の君》という二つ名を持っている。 もう1人の名前は結城(ユウキ) 玲於(レオ)。 セットしているのか寝癖なのか分からないふわふわの栗毛に、どこかぼんやりしているアンバーの瞳。 彼は常に無気力でぽやぽやしていてとても可愛い。本当に可愛い。 中性的な美形で背もそれなりに高いが、仕草や雰囲気がとにかく可愛い。 同い年の男に対して可愛いという感情を抱いたのは玲於が初めてだ。 彼は《夢幻》様という二つ名を持っており、俺はこの名前がとても気に入っている。 彼の雰囲気や特徴にマッチしていて素晴らしいと思う。 考案者とはいい酒が飲めそうだ。 鏡夜と玲於は授業サボってお昼寝クラブのメンバーだ。(鏡夜が部長、玲於が副部長のメンバー2人の非公式クラブ) しょっちゅう二人仲良く授業をサボっている。 オカンと手のかかる息子って感じで相性抜群だもんなあの二人。 でもこの前新たなお昼寝スポットを探して木の上で寝てみたって聞いた時は「うちの可愛い玲於が落ちて怪我でもしたらどうすんのよ!?」って鏡夜にキレた。 そしたら「俺は結構運動神経いいから平気だよ? 心配しないでだいじょぶだよ」って小首傾げて上目遣いの玲於に言われて、玲於の暴力的な可愛さで昇天するかと思った。 俺たちは英斗、或人、鏡夜、玲於、俺の5人でいつもつるんでいる。 5人とも親衛隊持ちの人気生徒なだけあって移動するだけでもとても注目を浴びる。 たくさんの視線の中廊下を突き進み、ようやく食堂の前に着いた。 「おいお前ら…準備はいいか? 開けるぞ? 大丈夫だな?」 扉に手を掛けた鏡夜がしつこいぐらいに確認するのには訳がある。 俺たちが頷いたのを見た鏡夜は、緻密な彫刻が施され豪華に装飾された煌びやかで大きな両開き扉を開けた。 扉が開き食堂の中に足を踏み入れた瞬間、既に中にいた生徒たちの視線が俺たちに集中した。 そして次の瞬間、 『キャアァァァァァァァァァ』 『ウオォォォォォォォォォォ』 と地響きのような叫び声が食堂を揺らした。 みなさんもうお分かりだろう。 これがさっき言った「訳」である。 鼓膜が破れそうな歓声に耐えるために俺たちは耳栓をしてから食堂に入ったのだ。 しかし耳栓をしても聞こえるものは聞こえる。 「《暁闇の君》〜!こっち向いてえぇぇ」 「久遠様今日もかっこいいですうぅぅ」 「一条様ー!僕とイイコトしませんかーー!」 「英斗様の声を聞かせてくださいぃぃ」 「《金烏》様今夜いかがですかぁ〜!!」 「会計様の髪の毛1本くださぁぁい」 「《夢幻》様…! 今日もお美しい…!」 「玲於ちゃ〜んこっち向いてくれえええ」 「蔑んでください《玉兎》様〜!」 「《月詠》様ぁぁ! 何でもするから抱かせてくれぇぇぇ」 なんか俺と或人への叫びがちょっとテイスト違うのが気になるけどまあ良しとしよう。 俺たちは騒がしい1階席を通り過ぎ、螺旋階段を登って2階にある特別席へと向かった。
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