4月:いつもの日常

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* 特別席についた俺たちは、窓側の席へと座った。 料理を注文するために或人が専用のタブレットを手に取った。 この学校は至るところにお金をかけているので、料理はタブレットで注文したらウェイターが席まで届けてくれるようになっている。 ちなみに支払いはカードキーで出来る。 このカードキーは寮の部屋を開けることができる他に、学園内での支払いなどに利用できる。 カードキーには種類があり、 白:一般生徒 緑:特待生 赤:風紀委員、役職持ち 青:生徒会(会長以外)、風紀副委員長 黒:生徒会長、風紀委員長 と分けられている。 俺の持っている青のカードキーは、大体の教室や施設に立ち入り可能、学園内での買い物は無料などの機能がついている。 実際生徒会に入って1番嬉しかったのはこれだ。 他にも授業免除や生徒会専用寮などの特典があったが、別にあんまり嬉しくなかった。 仕事が多いから授業免除を有効活用して遊ぶこともできないし、専用寮はでかすぎて最初は全然落ち着かなかったし(今はもう慣れた)。 「みんな何頼むの〜?」 「俺はハンバーグ定食!」 「俺は蕎麦。」 「僕は…う〜ん…パンケーキにする〜」 「エルちゃんは〜?」 「僕はグラタンにします。」 「おっけ〜注文するね〜。」 薄々お気づきの方もいるかもしれないが、俺は普段キャラを作っている。 気を許している人の前では素で喋るが、食堂のように不特定多数がいる場では敬語キャラを演じている。 それに応じて一人称も俺から僕に変えてより真面目に見えるように気をつけている。 俺がキャラを作っている理由は何個かあるが、とりあえず今は割愛しよう。 そして5分ほど待つと、ウェイターが料理を運んで俺たちの席へとやってきた。 「お〜! お前らの注文かこれ!」 「あ! 神田の兄貴ーー!」 「おうおう英斗は今日もうるせぇなぁ」 この神田の兄貴と呼ばれているウェイターは、神田(カンダ) 琥太郎(コタロウ)という。 俺たち5人組の頼れる兄貴分のような存在の彼は、少し長めの黒髪をオールバックにしておりワイルドな色気がすごい25歳のいい男だ。 俺は1年生の頃に彼に助けてもらったことがあり、それ以来兄貴として慕っている。 俺は将来兄貴のような男になりたい。 兄貴は生徒からの人気がすごく、兄貴目当てで食堂に来ているやつもいる。 でも兄貴はそういう生徒にもあくまでウェイターという態度を崩さず、彼が気安く接してくれるのは俺と俺経由で仲良くなった英斗、或人、鏡夜、玲於だけだ。 お前らは特別だって思われてるみたいでなんか嬉しい。 「ありがとうございます神田さん。」 でも俺は只今絶賛演技中だから素を出せない。 兄貴もそれをわかっているから微笑んで頭をポンポンしてくれた。嬉しい。 「じゃあゆっくり食べてけよ〜」 「いただきます!神田の兄貴!」 「じゃあな〜」 兄貴は手を振る仕草まで格好良い。 兄貴が階段を降り始めたから1階席から歓声が聞こえてくる。 あんなに叫んで疲れないのか奴らは。 それから俺たちはそれぞれの昼食を食べ、兄貴に挨拶してから教室へ戻った。
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