プロローグ 終わってしまった日常

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 正直、そのときのことは気が動転していてよく覚えていないけれど、端的に結論だけを述べれば、俺は左膝を負傷した。そしてそれは、俺が思っていたよりも重大な負傷だったようで、のちに医者からは、完治しない種類の怪我だと宣告を受けた。 「膝の骨が複雑に折れてしまっていて、たとえ繋がったとしても、どうしても違和感は残るだろう。その違和感を無視して動かせば、負担からまた怪我のリスクは増える他、当然パフォーマンスにも影響が出る。以前のように動かせることは、もうないかもしれないが、さしあたってしばらく――三、四年は様子を見た方がいい」  右利きの俺にとって、左足は大事な軸足だ。そこに大きなダメージを負ったままでは、到底まともなプレーは期待できないし、もちろんエースなんてものも務まらない。  周りの人から励ましの言葉はいくつももらったが、結果的に俺は、部ではレギュラーを外れることになり、さらに八割方決定していた私立高校へのスポーツ推薦の話も失ってしまった。
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