「ゆめのすず」

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「ゆめのすず」 三題噺テーマ「落果」、「父」、「鈴」 ①   ・主人公は、田舎から東京の大学に進学した女性 鈴。 ・大学は卒業出来たものの、就活で失敗…。 ・卒業から4年経った今でもいくつかのアルバイトを掛け持ちしている。 ・夢を見ることも忘れてしまい、毎日退屈で無意味な日々を送る。 ・そんな時、上京してすっかり疎遠になっていた父が怪我をしたと連絡が  入り、田舎へ帰省することになる。 ②   ・父は軽傷だったので一先ず安心する鈴。 ・父は今、一度もやったことのない林檎栽培をやっており、怪我はその  作業中に負ったと聞き、鈴は呆れる。 ・父はとにかく気になった物はやっておかないと気が済まない性格だった。 ・将棋や草野球、陶芸や水泳など最初は熱中するけど、飽きたらすぐに別の  物に移る父の姿を子供の頃から何度も見て来た。 ・そんな父を母は鈴が高校2年生の時に亡くなるまで呆れながらも  支え続けていた。 ・そして現在。数年前から庭に畑を作り必要な物を買い揃えて栽培に挑むが、  素人のため当然ながら出来るのは落果ばかり。 ・元気になった父は、折角だからと林檎栽培を手伝ってくれるよう半ば強引に  誘う。 ・鈴は正直渋るが、また怪我でもされたら面倒だし、東京に戻ってもバイト以外することがないから手伝うことを決める。 ・鈴はまずネットや近くの図書館で栽培の方法を調べ、一から土壌を  組み直す。 ・与える水量や害獣、害虫対策も調べ、父と一緒に栽培をして行く内に今まで  離れてしまっていた親子の時間を少しずつだが取り戻して行っているのを  鈴は感じた。 ・鈴は東京のアルバイトを止め、その後も田舎で別のアルバイトをしながら   父と共に栽培を続けた。 ・やがて二人の頑張りに答えるかのように実は少しずつ大きくなって行き、  期待に胸を膨らませる二人。しかし…。 ③   ・そんな二人の林檎栽培に危機が立ちはだかる。 ・超大型の台風が直撃するのだ。 ・アルバイト先で足止めを喰らってしまった鈴。 ・そこへ暴風雨に飛ばされ父が行方不明だという情報を聞き、  居ても立っても 居られなかったが、今は暴風雨が止むのを待つしかなく、  鈴は父の無事を願う。 ・雨は止み、捜索の末父は何とか発見出来たが、今回は以前のような軽傷では  済まなかった。 ・林檎畑に風除けの網を張ろうとした際に吹き飛ばされ、全身打ち身と足の  骨折で全治二週間の大怪我だった。 ・二人が苦労して作った林檎畑は、壊滅的だった。 ・今までの苦労を一瞬で水の泡にされて、もはやこの先どうすれば良いのかも  分からず「もうおしまいだ…」と絶望する鈴。 ④   ・そんな鈴に父は、今まで誰にも話していなかった自分の過去を話す。 ・父は今でこそ活発だが、子供の頃は病弱で入退院が多かった。 ・同世代の子供達と遊ぶことも出来ない毎日に「自分の人生はこの先 一生、  同じことの繰り返しのまま終わるんだ…」と子供でありながら将来に  絶望していた。 ・しかし、ある時同じ病室にいた一人の老人が彼に語り掛ける。 ・これまで仕事人間として生きて来た自分は、いざ退職するとどうして  良いのか分からず思い悩んでしたが、もう思い切って何でもやってみようと  思い立ち、様々なスポーツや習い事を始めた。 ・その内に、仕事人間時代には見向きもしなかった新しい趣味をいくつも  見つけることが出来、仕事をしている時には感じなかった充実感を  得られたのだ。 ・老人は自分の半生の話の最後にこう付け加えた。 ・「人生は大きな木の枝のような物。一方が途切れてしまっても、選択肢と   なる可能性という枝は無数にある。大事なのは、それを見つけようとする   意志と勇気だ。諦めたら小さな苗のままだ」と。 ・この言葉に勇気を貰った父は、その後病気を克服し、現在に至るまで  様々なことに挑戦しながら自分の可能性を見出して行ったのだ。 ・これを聞いた鈴は、今まで夢を見出せなかった自分の人生と、色んな事に  挑戦する父を恥ずかしいと思っていた自分を見つめ直し、父が治るまで  自分が林檎栽培を続けることを誓う。 ・鈴の人生という木に新しい夢と枝が伸びる―。 ・それから数年後、鈴と退院した父の林檎畑では、立派な林檎が収穫出来る  ようになる。 ・諦めずに根気良く育てた二人の林檎は、地元でも評判となり、今では畑の  規模を大きくし、全国に出荷出来るようにまでなっていた。 ・ようやくお互いが心の底からやりたいと思うことを見つけることが出来た  鈴と父。 ・林檎は父が鈴の名前を借りて、こう名付けられた―。 ・「ゆめのすず」と―。 終わり
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