壹、 天兎 1

27/29
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
「そうねぇ。こういう、身体が熱くなるお水? みたいなのは、初めて飲んだわ」  どうやら月には酒がないらしい。また一つどうでもいい知識を得る。  いや、そんなことより。 「んで、肝心のユエとやらは補給できたのか?」 「ん? まあ、ぼちぼちかな。ひとまず経口で摂取するには十分な量だったわ」 「そうかそうか。そりゃあ、よかったよ」  俺の淡白な返しにアオは「さてはあんた、信じてないわね?」と訝しげな顔を向けてくる。  もちろんのこと、半信半疑だ。偶然とはいえ彼女の所望のものを探し当てたのだから、信じる信じないまでは俺の自由である。  それから俺は、アオに家の中を軽く案内し、生活の流れを一通り説明した。一応相手は客だから、家事や雑事を手伝わせるわけにはいかなくても、せめて自分のことは自分でやってもらいたい。代表的なのは着替えとか風呂とかだ。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!