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残念なことに、アオはラビットフードを食べなかった。粒状のそれらを一つだけ指で摘み上げて口へと運んだが、咀嚼した途端に複雑な表情を呈し、苦労して飲み込んだのちにはボソッと「……いらない」と言った。
ならばと思って、俺が自分で用意した昼食の中から野菜炒めを一部取り分けて出してみると
「うん。初めて食べたけど、味はいいわね」
と意外にも喜んで食べ始めた。どうやら味覚は人間寄りらしい。
それからアオはゆっくりと時間をかけて皿の上の半分ほどを食し、やがて満足げに帯の上から腹を押さえた。座敷の机を挟んだ俺の正面で、身体を反って足を崩す。
俺は手早く自分の分を平らげてから箸を置き、皿を重ねて一息ついた。
「で、味はいいが、何が不満なんだ?」
アオは「ん?」とこちらへ視線を向ける。
「ああ……ごめんね。そういう意味じゃ、なかったんだけど」
「別に気にしたわけじゃないけど。そうじゃなくて、お前はあくまで兎なんだよな? じゃあ、人間の飯食って、身体に何かあったら困るだろう。食えないものとかあるのか?」
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