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「お、おい。待て待て、待ってくれ。それはまた、何かの冗談か?」
唐突に滔々と語り始めたアオの口上。俺は面食らいながらも、ひとまずそれに制止をかける。いきなりではとても頭がついていかない。
対して、気分よく口を動かしていたらしいアオは軽く俺を睨んだ。
「ちょっと紫苑。戯言であろうとなかろうと、まず他者の話は最後まで聞くものよ。それと、今のあたしの話の中に、笑えるところが一つでもあったかしら?」
「いや……なかったけど」
「なら、全部真面目な話に決まってるでしょ!」
「でもお前」
「うるさい。とにかくあたしに喋らせて!」
……俺の話も聞いてくれ。
「要するにね。あたしたち兎は、月の光を浴びることで生きてるの。そして、あたしたちはその月の光から得られる生命力のことを『ユエ』って呼んでる」
「……ユエ?」
「そ。あんたたちの言語でもっとも近い発音をすればね。これがあるから、あたしたちは月で生きられるし、もっと言えば、その恩恵を一番近くで享受できる月に、好んで住んでるの」
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