天兎 2

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 こうなるとあまり口論にもならず、結局、俺が引き下がることになる。渋い顔で着替えをし、顔を洗って、朝食を済ませる。ついでにアオにも同じ朝食を用意してやり、それを餌にようやく着物の着用を要求。片手間で適当に家事を片付けた。  学校へ行く時間になったので鞄を持って玄関先に立つと、相変わらず寝起きとは見違えるような立派な着物姿でアオが現れる。 「これからこうしてあんたを見送るのが、あたしの日課になるわけね」 「妙な言い方はやめてくれ。あと、俺が留守の間、家の中の物とか壊すなよ」 「こんなお淑やかな兎に向かって失礼ね」  淑やかの意味を知らないのではないかと思ったが、わざわざ説明する時間も惜しいので、無視して俺は家を出た。
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