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昼休みになった。俺は例のプリントを職員室に届けたあと、食堂の購買で手頃なパン二つと飲み物を調達した。この学校の食堂は毎日例外なく混み合うが、俺の場合はいくらか人除けが効いて買いやすい。はじかれ者の数少ないメリットである。
とはいえさすがに、食堂でそのまま席を取ろうとすれば待つことになる。それを見越して盆に載せるメニューではなく持ち運べるものを買ったのだからと、俺はすぐに踵を返した。
なるべくひとけの少ない場所を求めて彷徨っていると、廊下の反対側から歩いてくる人物に視線がいく。女生徒二人。うち一人は遠目でも見紛うはずない、月見里紅音だ。友人と楽しそうに談笑している。やがて俺との距離が縮まると、ごくごく自然に声をかけてきた。
「こんにちわ、宮東さん。職員室からの戻りですか?」
会話を中断されたもう一人は少し怪訝な顔をしていたが、おそらく理由は、その相手が俺だということの方が大きいだろう。
「ああ、ついでに食堂に寄ってきたところだ」と手元のパンと飲み物を見せる。
「そうでしたか。食堂は、混雑していましたか?」
「まあな。あそこはいつも混んでるよ」
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