天兎 2

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 まずもって彼女は弁当を忘れることなどなさそうだし、仮にそういったことがあったとしても、家から届けなんかが寄越されそうだ。彼女の家は大層な豪邸で、使用人までもがいるという。いったいどこまでが本当かは知らないが、そういう類の話をよく耳にするのだ。彼女の立ち居振る舞いは非常に令嬢然としているから、自然と周りも信じてしまうのだろう。 「宮東さんは、食堂では食べなかったんですね。やはり混んでいるからですか?」 「まあ、そうだな。あと……一人だとちょっと目立つんだ」  主に悪い意味で。自意識過剰では、ないと思う。  しかし俺はすぐ、口にしてしまったことをはぐらかすように、ぎこちなく笑う。 「もし食堂に行くなら、もう少し経ってからの方が空いてるよ。あそこは昼休みになってすぐが、極端に混んでるから」 「そうなんですね。では、少し時間をおいて行ってみます」  対して月見里の笑顔の、なんと自然なことか。  俺はその笑顔を数秒見つめ、すぐに我に返って歩き出した。 「じゃあ、またな」 「はい。よろしければ、今度、食堂ランチをご一緒しましょうね」
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