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去り際、彼女のその言葉に俺はドキッとした。なんなら俺よりも隣の女生徒の方が驚き顔で月見里を振り返っていたが、内心そうしてしまいそうな気持ちは俺も同じだった。
……世辞か? さすがに世辞だよな?
しかしそれを確かめることなどできるわけもなく、俺は足早に彼女たちから離れる。少し距離ができたところで上階への階段に曲がると、俺たちのやりとりをずっと横で見ていた隣の女生徒が、にわかに声を高くして尋ねるのが聞こえてくる。
「嘘!? ねぇねぇ紅音ってさ、宮東くんと仲良かったの?」
「そうですね。以前、学校の外で少し話す機会がありまして、それから――」
俺が階段で上へと進んでいくにつれて、彼女たちの会話は聞こえなくなっていった。
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