天兎 2

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「外壁か……随分と身軽なんだな」  にしても校舎の外壁を伝う兎って……一応ここ、三階建の屋上だぞ。  呆れる俺に、しかしアオは気にしたそぶりもなく、さも当然と言いたげな顔で答える。 「大抵の獣は身軽なものでしょ。地上に来てもう丸二日休んだし、あんたがくれた食事と酒で回復も順調よ。これくらいは問題ないわ」 「そうか。それは何よりだ」  話に聞くユエとやらの力だろうか。眉唾ものではあるが、本人が順調と言うならまあいい。 「つーか、その風呂敷には何が入ってるんだ?」 「んー……まあ、色々とね」  アオは首を傾げてわざとらしくとぼける。 「何でもいいけど、着物はちゃんと入ってるんだろうな?」 「あ、それは家に忘れたわ」 「はあ!? 着物より優先するものがお前の荷物にあるのかよ? いいか、素っ裸で歩いて警察に捕まったら見捨てるからな!」 「けーさつ、ってのが何かは知らないけど……安心なさい。所構わず裸身を晒すような、はしたない真似はしないわ。今のところ、あんたの前だけよ」 「俺の前でも是非やめろ!」
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