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そうしたら俺の心臓ももう少し穏やかになるはずだ。ニヤついたアオに向かってそれだけ吐き捨てると、俺は彼女を背にして黙った。素直にからかわれてやるつもりはない。
望み通りの反応が返ってこないとわかると、アオは「ふぅん」と真顔に戻って訊いた。
「それよりあんたさ。この群の中では、随分と邪険にされてない?」
群とは、学校のことか。これはまあ、言われるだろうとは思っていたがやっぱり言われた。
「……放っといてくれ」
「これでよく平然としていられるもんね。群から弾き出されるのは、獣にとっては死と同義だけど?」
「人間の場合はそうでもないんだよ。別に平気さ、これくらい」
「そうは言うけどさ。孤独が平気な生き物なんていないでしょ」
軽々しく言うアオのその言葉には、しかし妙な実感が伴っていた。
俺は何も答えず、手元に残ったパンの一欠片を口に放り込んで、せっせと咀嚼に勤しむ。
「あ、でもまるきり一人でもないか。ヤマナシっていったっけ? 好きなメスが近くにいれば、気も紛れるかもしれないわねぇ」
「んぐっ!? なんでお前がそれを!」
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