天兎 2

16/18
前へ
/321ページ
次へ
 ようやくパンを飲み込もうとしたところへの思わぬ不意打ち。盛大に吐き出しそうになるのをなんとかこらえる。咳き込みながらアオを見ると、彼女はピョンっとフェンスを飛び降りて、俺の横に座り込んだ。 「え、何? 隠してるつもりだったの?」 「か、隠すも何も……いや、別に……」 「あっはっは! そっか、あれ隠してたんだ? ごめんごめん」 「お前……ちょっとそれは、笑いすぎだぞ」  隣のアオは、まるで転がるように短い両手で腹を抱えている。  俺は頭を抱えたい気分だ。 「まあまあ、いいじゃない、照れなくてもさ。あたしほどともなると、ユエで他者の心を読むって芸当も、できたりできなかったりよ?」 「嘘だろ……もう、なんでもありかよ……」  読心術? それってもしかして読心術ってやつか? いくらなんでも反則技だぞ。  信じられない思いでアオを見ると、彼女はまるで俺の心の声に答えるかのようにニヤリと笑った。こいつ……。だったらこっちは、心頭滅却するまでだ。 「ああもう、やめろやめろ。勝手に人の心を読むな。月見里は、別にそういうんじゃないから」
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加