天兎 2

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 俺はなるべく声穏やかに、本当っぽく聞こえるようにそう言った。こういう事情がアオにバレると面倒なのは目に見えている。頼むから顔とか赤くならないでくれ! 「ふぅん。別にそういうんじゃない、か。あんた……意外にわかりやすくて可愛いわねぇ?」  しかしアオは、これみよがしにお得意の八重歯をちらりと覗かせる。……駄目だったか。 「まあ、あたしだって、特別色恋に長けてるわけじゃないけどさ……でも、あれはどう見たってあんたの片恋でしょ」 「片恋って言うな。だから違うって」 「ああいう、清楚で可憐でお淑やかー、なのがいいわけ? だったらあたしでもありでしょ? ほら、あんなお高くとまってない分、なおさらさ」  聞けよ。  そして何を言っているんだこいつは。さてはやっぱり淑やかの意味知らないな? ついでに清楚と可憐もかなり怪しいが、この思考を読心術で気取られても面倒なので、すぐに打ち切る。 「こんなに違うって言ってるのに……お前、しつこいぞ」 「あんたこそ、そんなにムキになることないのに。好きとかじゃないなら、じゃあ、ただ気になるから聞かせてよ。あのメスと初めて話したのは、その昔に街で、って聞いたけど?」
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