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「よく素直についてきたな、宮東」
俺が答えずにいると、そいつは聞こえよがしに舌打ちをし、次いで右の拳を振りかぶった。
当然、避ける。そしてそれを合図として、残りの四人も向かってくる。
殴りかかってきたのだから、もうこちらから殴り返しても文句はないはずだ。とりあえず一通りかわし、俺は改めて拳を握る。
反撃に出ようとしたところで、突然背後に、タンッと足音が聞こえた。
「こちらにいらしたのですね。申し訳ありません、はぐれてしまって」
予想外、かつあまりにも場に不釣り合いなそのソプラノは、ものの見事に四人全員の動きを止めた。表通りに延びる光の中から小走りで現れたのは、当時の俺とはまだ面識のなかった月見里紅音だ。目立つ女生徒だったから、辛うじて同じクラスにいるという認識だけはあった。
「は? お前、なん……」
彼女の闖入に、俺は戸惑いつつもそう零す。俺の目の前で構えていた相手も気持ちは同じだったようで、威圧的な声で訊いた。
「おい、誰だてめぇ! 今こっちがこいつと話してんだろ!」
その間に、月見里は素早く俺と相手四人の間に割って立ち。
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