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「……え?」
「必ずしも事実とは限りません。仮に事実だったとしても、それはその人の一面を捉えただけのものにすぎない。ですから私は、自分の目で見たことだけ、信じるようにしています」
彼女の視線は、まっすぐに俺へと向いていた。曇りのない大きな瞳で語られたその言葉も同じくらいまっすぐで、そして、とても澄んでいた。
俺が依然、何も答えられずにいると、彼女が顔を綻ばせてまたすぐに言う。
「ところで、ご存じですか? 私、文化祭実行委員なのです」
「……いや、知らないけど……」
「では知ってください。買い出し、まだ済んでいないので、宮東さんも是非ご一緒しましょう」
「それは……別に俺が手伝う義理はないんじゃ」
向けられた笑顔とまっすぐな瞳に負け、目を逸らすと、その隙に彼女は再び俺の手を取った。
「いいえ、宮東さんも同じクラスの一員です。実行委員の役目は、生徒全員が気持ち良く文化祭に参加できるようにすることですから」
「あっ、おい!」
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