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そのまま来た道をまっすぐ戻っていく彼女に、俺は惹かれた。真面目で丁寧、だけど妙に力強いその姿勢に、ついつい別れるタイミングを見失う。結局、繁華街まで引き返すと、なし崩し的に彼女の用に付き合わされることになった。
店を巡り、メモに従って次々と物品を買い揃えていく。するとそれらはみるみるうちに一人では運びきれない量となり、俺は余計に別れを切り出せなくなる。店を出るたび、右手に左手にどんどん荷物が増えていき、俺の顔は次第にげっそりと沈む一方、しかし月見里の表情は変わらず凛と涼やかだった。
工具、木材、テープ、色紙……それらを的確に漏れなく、そしてわずかだけの楽しさを滲ませながら選ぶ彼女。そんな光景に、俺はじっと、懐疑的な視線を向けずにはいられなかった。
「さきほど出すぎた真似をしたこと……まだ怒っておられますか?」
出すぎた真似――それはもちろん、月見里が突然、喧嘩に割って入ったことだ。
「……怒ってはいないよ。けど、あれは危ない」
「では、宮東さんも危なかったはずです」
「俺は喧嘩に慣れてる。あんなのに囲まれたって、どうってことない」
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