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事実だ。誇れるものでもないが、それなりに喧嘩は強い。
「そうでしょうか。いくら喧嘩が強くとも、痛いものは痛いと思います」
「全部避けるさ」
「違います。相手を傷つけるというのは、同じように自分も傷つくことですから。不必要な諍いは避けましょう。皆で仲良く。それが一番です」
あまりに平然とした口調で絵空事めいたことを言うものだから、少し戸惑う。
「そりゃ、それができたら、一番なんだろうけど……」
「では仲良くしましょう。簡単ですよ。せっかく同じ学校で、せっかく同じクラスなのです。私は宮東さんとも、仲良くしたいと思っています」
彼女はどこまでもさっぱりと言った。俺と仲良くしたい、などと。
それは久しく――いや、もしかしたら今まで一度も、言われたことのない言葉だった。
「そんなこと言う奴は、普通はいない」
「ここにはいます」
月見里は俺を振り返って微笑む。そして続ける。
「それに、宮東さんがその気になれば、そう言う人はこれからもっと増えると思います」
「いや、そんなわけ……」
「ありますよ。宮東さんが、宮東さんの持つ力を、宮東さんと皆が喜ぶように使えば、きっと」
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