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いや、女一人であんなことをするものではない。これきりにしてほしいものだ。
だが、それでも。
このときの俺は、確かに助けられたのだろう。あの喧嘩からだけではない。傷つけられること、傷つけること、その結果また傷つけられること。そんなささくれた日々の繰り返しから。
だからだろう。このときの俺には、殴る相手ができてちょうどいいなんて気持ちは、もうなかった。むしゃくしゃしていて、何かを殴りたくて、でも殴っても全然晴れなかったであろう不快感が、嘘みたいに晴れていた。
この、たった一人の女の子によって。
彼女にもらった言葉の一つひとつが嬉しかったこと。俺はそれを、日を重ねるごとに何度も何度も思い出し、いつしか必然的に、彼女への好意を自覚した。
俺は月見里が、好きなのだ。
そしてそれは、今でも変わらずこの胸にある。
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