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「どこでもいいわ! とにかく連中を迎え撃てるところ! 多勢相手に飛び道具じゃ、開けた場所は部が悪いでしょ!」
確かに。銃が相手となると、ここでは四方八方、上からも狙われてしまう。
「けどお前、土地勘ないだろ。無闇に走ってまた囲まれたら――」
「じゃあどっかいい場所探して!」
探してって……しかしここで蜂の巣はもちろん御免だ。俺は脳内の地図を検索、のち答える。
「このまま直進して左に折れると、線路の高架下がある。短いトンネルみたいな――」
「そこでいいわ。急ぐから、速度上げて!」
嘘だろ!? もう既に全力だが……それでもなお、アオの方が速い。着物に、今になって気づいたが草履――しかもそこそこかかとの高い――とは思えない身のこなしだ。
「おい、あいつらは何なんだ?」
俺は必死で走りながら切れ切れの息で尋ねる。
「あれは『地兎(ちと)』よ。この地上に住む兎」
この地上……つまりは月ではなく地球に住む兎ということだろうか。
「それって普通の兎なんじゃないのか?」
「たぶんあんたが今考えてるのは、また別の生物ね。ほら、よく見て。人の姿してるでしょ」
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