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そう思って何気なくまた窓の方に顔を向けて、そこに映った自分の顔があまりにも醜くてひいた。外見も内面も不細工なんて、最悪じゃあないか。
落ち着くまでと思っていたけれど、ここにいればいるほど自分のことが嫌いになってしまいそうな気がした。
何も注文せずにカフェを立ち去るのはどうかと思ったけれど、自分が惨めすぎて、もうこれ以上ここにいたくなかった。せめてレジの傍の小物雑貨でも買って、さっさと帰ろう。
それは、席を立とうと意を決して椅子を引いた瞬間のこと。
「どうぞ」
さっきまでカウンターの向こう側にいたはずのあのイケメン店員が、瞬間移動したみたいに音もなくあたしの傍に立っていた。テーブルの上にはいつのまにかココアが置かれている。
それは、あたしが一番好きな飲み物だ。どうしてわかったの?
「そんな急いで出ていこうとしなくても。気持ちが落ち着くまでゆっくりしていけば?」
見た目よりも落ち着いた、低く優しい声だった。その優しさは、あたしの強がりを打ち砕くのには十分すぎた。立ち上がって帰る気力がなくなっていく。
もう、いいか。飲み物も出てきたし、店員さんがそうするように勧めてくれているんだから、このままここで泣いちゃえ。
本当は大声をあげて泣き叫んでやりたいくらいだったけれど、さすがにそれができるほど理性を失ってはいなかったから、気の済むまで静かに泣かせていただくことにした。
「あたし、たった今ふられたんです」
ここまで恥ずかしい姿を見せておいて今更だけど、理由もなく泣きまくる変人だと思われたくはなくて、一応言い訳じみた台詞を小さく口にする。既にカウンターの中に戻っている店員さんには、聞こえなければそれでいい。
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