Bitter

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 これはコーヒー。そう思いながら飲んでみると、確かにさっきよりは甘く感じる気がした。だけどこの失礼な店員さんの言うことをすんなりと認めるのが悔しくて、無言のまま唇からカップを離す。  横目で店員さんを見ると、全てお見通しだとでもいうように歯を見せて笑っていた。 「単純なやつほど先入観に惑わされるんだよな」  どうせあたしは単純だ。そして店員さんは最低だ。傷心の乙女を前に普通こんな態度とる?   演技派女優はもうおしまい。だって、いらいらして仕方ない。今自分が置かれる惨めな現状にも、あたしの立場を理解していながら共感や寄り添いというものを一切知らない店員さんにも。  ええそうですとも、これは正真正銘の八つ当たりですけど何か問題でも? 「あたしはココアが一番好きなんです!」  また大股でカウンターまで戻り、空になったカップを店員さんの目の前にドンと置けば、はいはいと肩を竦めながら流れるような作業でそれを片付ける。  その時ふと目についた名札には、栗原と書かれていた。おそらくクリハラと読むのだろう。 「飲んだんならさっさと帰って顔洗いな。恥ずかしいぞ、おじょーちゃん」  何その子ども扱い。そういう言動がさっきからむかつくんだってば。ただしそれは紛れもない事実で、反論できる言葉がどこにもないのがまた悔しい。
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