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駅のルートは決まっていて、そこには茶色い道ができています。
だから草原の花を踏み潰す事もありません。自然は貴重な宝物。仕事だからと言って壊せません。
「ぬこっ」
あ、文字盤が動きました。地区をまた一つ過ぎたようです。現在の位置は1−28。静かな草原はここまでです。
「外、見てくるね」
移動中も気は抜けません。運行ルートに危険がないか、天気の変化はないか。安全に駅を動かすために、駅員には仕事が沢山あるのです。
そして何より大切なのは、落し物の捜索。うえのひとが落としたものを拾って空に返す。これが私たちの、最も大切なお仕事です。
「ん〜……」
辺りに広がるのは緑ばかり。鮮やかな花は綺麗ですが、これはもう毎日見た景色。決して悪くありませんが、たまには新しいものに会いたいです。例えば「いきもの」とか……
「ぬこっ⁉︎ 」
けたたましい音が鳴りました。ランプが赤く点滅します。看板の文字は9→1。九駅からの緊急連絡です。
「こちら九駅。至急応答願う」
低くて渋い声。九駅の駅員さんは、白い髪のおじさまです。
「こちら一駅です。どうされました? 」
「おぉ嬢ちゃん。悪りぃが一本、そっちに伸ばしてもいいか? うちじゃもう、対応できなくてよぉ」
九駅は大きな転車台のある立派な駅。おじさまはお癒車さんで、壊れた列車の修理が得意です。それでも対応できないということは……
「廃車、ですか……? 」
「あぁ。あんたのとこに任せる。眠らせてやってくれや」
駅には其々役割があります。そして一駅の役割は、直せなくなった列車をうえの世界に帰すこと。終わった命を見送る「終点」。それが一駅です。
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