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太陽の頭が見えて来たら、今日の夜も終わりです。
遠くから鳥の声が聞こえて来ました。風がごうっと吹いて、草原がざわざわ声をあげます。
私は布団から出ると、空に向かって大きく伸びをします。今日の私の目覚めは良好。爽やかな一日になりそうです。
それから階段を降りて、構内の明かりを一つひとつ点けて行きます。これが今日の駅の目覚め。こちらも良好。異常なしです。
「十二駅から一駅へ。定期連絡です」
駅員室の電話が言いました。今日のお仕事の連絡です。お相手は十二駅の駅員さん。私たちのお仕事を管理しています。
「一駅から十二駅へ。おはようございます」
「おはよう。よく眠れた? 」
「はいっ。星がすごく綺麗でした! 」
「そう。1ー25は空気が綺麗だからね」
十二駅さんは優しいヒトです。定期連絡を忘れたときは別ですが。
「それでは今日の仕事。あなたは久しぶりの『移動』ね」
「移動ですか⁉︎ やったぁ‼︎ 」
お仕事で一番楽しいのは「移動」です。駅を動かして、ほかの場所に置くのです。
「1−25から1ー30へ。道中の天気は晴れのち雨。障害は特になさそうだけど、十分気をつけて。落し物の回収も忘れないように。いいね」
雨が降ると、駅の中に水が入って来てしまいます。濡れるのは嫌ですが、これは大事なお仕事。私も大人ですから、これくらいでごねたりしません。
十二駅さんは「頑張って」とだけ言って、電話を切りました。さて、出発の準備を始めましょう。
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