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俺…センターを隣車線にカットア
ウトしてセダン(乗用車)とすれ違
ったまでは覚えてる。
背後で…何か衝撃音が聞こえた。
それは音というより波動に近かっ
た。
波が背後から追って来たが、俺は
被(かぶ)りたくなかった。
俺は、振り返らなかった。
俺はただ、あの夜、宇宙(そら)の
数のプラネット(星)が敷きつめら
れているプライア(砂浜)に行って、
プラメネイド(遊歩道)を歩いたり、
朝焼けの海を見たかっただけなん
だ。
大学で十真と再会する少し前で、
セックスとジェンダーが縺(もつ)
れあいをしてて、どうにも自分の
体を持て余していた。
他人(ひと)は皆、真っすぐ 一方向
に歩を進めているのに、俺は、進
むべきか戻るべきか、右か左か、
夜の国道で迷子になってた。
翌朝のTVニュースで見た。
すれ違ったセダンがバイク数台と
対向車を巻き込む接触事故。
目撃ドライバーがモバイルで通報。
セダンのドライバーは二十代の青
年で、全身を強く打ち…死亡…
胃がスロッシングして、吐いた。
生命(いのち)の死亡率は100%で、
遅かれ早かれ誰もが最終的には臨
床死と見なされる。
だが、満月の真夜中に、俺が砂浜
(プライア)に行こうなんて企(くわ
だ)てなければ、あの青年は今も生
きてた。
何の咎(とが) もないのに、23歳
で生を強制終了だ。
なぜ…だ?
俺は戻って何かすべきだった?
気の利いた対応を?
だが何ができたろう
今となっては…
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