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あの年の四月、俺は地方の大学で
健と再会した。
喜びもつかの間で、秋には健の父
親が急逝し、健が大学を辞め、俺
もキャンパスライフを諦めた。
健を追って地元に帰った。
表向きは健康上の理由…
それまでは情報学科に籍を置いて
いて、少し経済も齧った。
外車で大学(ユニバーシティ)に通
う、企業グループ代表の御曹司と
いうことで、ちやほやされた。
スウォッチにアルマーニ。
鬼 十真、あいつ、靴が
ビスポーク(注文、あつらえ)
だぜ…
でも、何だろう、彼には何か…
いわく 言い難いものがある。
コンセキュティヴ(連続した、
一貫した) な何か…
バーストラウマか何か?
いや、非A・B型肝炎だって。
両腕の内側に、無数の
針の跡がある。
静脈注射の痕跡(トレース)…
「高校の時、腎不全と肝炎で、
俺、死にかけたんだ。
薬物常用者と
薬物中毒者は違うよ」
死から生還した男の精神は鋼(は
がね)のようになっていた。
恐れていたものを飛び越してしま
ったので、遠慮会釈なく鋼は磁石
に近づいていった。
鬼のように…
キサラギは鬼と書いて、そう読
ませる。
立春の前日、追儺(ついな)の行事
が如月(きさらぎ 陰歴2月の異名。
春)にあるからだろう。
鬼やらい。
釈迦の入滅( 涅槃会 (ねはんえ)
陰暦2月15日)も更衣と書いて
キサラギだが、滅相(めっそう)
もない。
業界用語に、節分天井なんて
ワードもあって、エコノミクス
(経済学)とは因縁(いんねん
不可避性、宿命性)のある姓名かも
しれない。
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