プライア

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鬼 十真(きさらぎ とうま)が、陽向 健(ひむかい たける)に近づいたの は、ネーミングに憧れたからかも しれなかったが、これもまた、ふ たりの間にはコンセキュティヴな 何かがあると周囲に感じさせた。 それはそうだった。 ふたりの間には歴史と秘話があっ た。 おかしな現象が起きていた。 黒光りする体毛のドーベルマンを 撫でようとすると、金のたてがみ 狼が牙をむき出して唸(うな)り、 この狼を懐(なつ)かせようとする と、横あいからドーベルマンが、 表情を変えずに、いきなり噛みつ くのだ。 女子学生には高価なプレゼントと 嫌みが、男子学生には大盤振舞(お おばんぶるまい)と悶着がくり返さ れた。 そういうわけで学生たちは学び 、 男女取り混ぜたコンパがあっても、 学生らしからぬふたりは、必ずあ ぶれたのだった。 「敬遠された?」 「弾かれた…」 「Let's sleeping dogs lie」 「触らぬ神に祟りなし…か」 そうそう「あのふたり、できてん じゃね?」というウワサの根絶方 法を教えよう。 Ⅰ 陽気に120%認める。 Ⅱ 派手に こっそり異性と遊ぶ。 Ⅲ 秘密はふたりだけで抱く。 秘密…あれ? 話してなかった? なに、たいしたことではないん だけど… 周囲(まわり)は、俺と健が、大学 で初めて出会ったと思ってる。 実際は十代の半ばに出会って、お 互いに初体験を済ませたんだ。
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