プライア

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「今度は何をやらかした?」 「GTスペックカー(仕様車) を 1台、おシャカにした」 「バカ…」 「俺のゼファーが妬いた。 スピルオーバー(電波が目的外の 地域に到達してしまうこと 原義は 溢れこぼれる ) だ」 「はあ? スピードオーバー じゃなく? 十真、おまえ、 いい加減やんちゃ止(や)めて 詩人になれ」 「…食えるのか、それ?」 「おまえが館にこもって 詩作にでも励めば、世間が 安心ってこった」 「スタンザ(連・一群の詩行) ってか? 連(れん)は編んでる」 「ああ、おまえのフォロワー (追従者・とりまき)連な。 地元の。示談公証人に貢 (みつ)ぐより、まだそっちを 見継(みつ)いだ方が生産的だな」 「親父みたいなこと言うなよ。 それでなくても今回は、 運行共用者なんたらで、 奴は機嫌が悪い」 「当然だろう。キサラギ企業 代表としては…」 街の北側を東に流れる河の岸辺で、 バリオスは草に伏し、ふたりの青 年は小石を手に、水切りを始めた。 水面(みなも)は陽に煌めいて、石 は少しの間、水面を飛び跳ねて進 むが、終(つい)には水底(みなぞこ) に消えて行く。 「健…あれから、君、どうやって 折り合いをつけてる?」 「折り合い?」 「その…友人関係ってか…」 「何を言ってるんだ。 俺がおまえに訊きたい位だ。 十真、その気(け)のある おまえのフォロワーを、 ひとり俺に寄こせよ」 「嫌(や)だ。君みたいな渾名 (あだな)の奴には…」 「徒名(あだな・艶聞・浮き名)?」 「それもあってのニックネーム。 健、自分が何て言われてたか 知ってるだろ?」 「知らん。何て?」 「クレバネット」 「クレバ…? なんだそりゃ」 「ギャバジンを防水加工した布」
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